23/05/31

〝モンスター級〟コンテンツと協働し、斬新なアートを銀座ミュージアムで展示。

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銀座の一角にあるギャラリー。その夜、内覧会に集まった人々—–特撮映画監督、評論家、スーツアクターら著名人たちは驚嘆の声を挙げた。彼らが目にしたのは、日本の室町風の絵巻物。だがそこに描かれたのは、神仏でも貴人でもない昭和生まれの「怪獣」たちの姿だった。翌日からの展覧会は、ギャラリー始まって以来の観客数1000%を記録、帰路につく人々は皆、怪獣たちが踊る「絵巻」のポストカードを手にしていた。

きっかけは、インフィニティスタイルのAD二人と外部スタッフT氏の他愛ない雑談だったという。ADは大の特撮ファンで、T氏は海外で名の知れた絵画アーティストでもある。有名な怪獣コンテンツのキャラクターたちを日本古来の〝妖怪〟として読み解けないか? と。
T氏が「じゃ、僕が絵巻物に描こうか」その話を聞いていたもう一人のADが、指を鳴らした。「ラフをあげてください。私が話をしに行きます」怪獣の著作権を持つ特撮コンテンツ・プロダクションにプレゼンテーションしようというのだ。公式アートとして認めてもらい、運よくタイアップの玩具や食品メーカーが見つかれば、デザイン受注を…という企てだ。

プロダクションは気に入ってくれた。IPは検討しよう、ただしインフィニティスタイルがマネタイズする、という条件付きで。

そのころ、既にT氏はアトリエにこもって、十体、二十体と「怪獣=もののけ」絵を仕上げつつあった。T氏の熱を知って、ADたちは決意する。
これはやはりアートだ。企業とタイアップしてその意向が入ってしまえば、表現の純度は曇ってしまう。インフィニティスタイル自身がアートプロダクツとして売り込んでいくしかない、と。

ギャラリーSを紹介したのは件の特撮プロ内のスタッフである。伝統工芸とロボットフィギュアを並んで展示するようなハイコンセプチュアルなアートギャラリーで、ちょうど怪獣キャラの玩具展示の企画を検討中だった。インフィニティスタイルが絵巻物のラフを見せると「断然、こっちの企画がいい」となった。天然の和紙と泥でつくった絵具—-最後は自然に還っていく—-というコンセプトに則った物体感もアートとして高く評価された。
『ギャラリーで原画のレプリカとポストカードを販売する。』マネタイズの仕組みづくりもこのとき、同時に完成した。

こうして全長11mに及ぶ、怪獣=もののけたちの絵巻がお披露目された。2021年秋。コロナ禍にもかかわらず展覧会はひきもきらずの盛況となった。

この舞台裏では、様々な動きがあった。
IP獲得は、当初考えていたよりも難航した。特撮プロ側には一つひとつのキャラクターに対する半世紀にわたる思い入れがあり、表現上の高いハードルとなってインフィの前に立ち塞がった。そして、それを乗り越えることはIPに関する高い経験値を身に付けることにつながった、とADたちは語る。
また、開催にあたっては、事前に著名人や高名なファン層にコンセプトを打診して賛同を得、追い風となる環境をつくった。いわばインフルエンサーだが、かなり特化した世界での口コミ展開で、これもインフィニティスタイルにとって初めての経験だったという。WEB特設サイトでは気迫のこもったアート制作の動画も流した。

実はこの案件はインバウンドを強く意識したものだったようだ。初回のリーチは難しかったが、怪獣というコンテンツの魅力は永続的であり、次はグローバル展開を考えているという。

IP交渉、アートプロダクツ、物販、インナープロモーション…この案件で実に多くの学びを得た、とADたちは振り返る。だが何よりの収穫は、好きなことを徹底的に貫けば、プロフェッショナリズムに到達できるということだろう。仕事がもたらしてくれるドライブ感とグルーヴ感を、彼らは今後も大いに楽しんでいくだろう。